食べきれないほど注文するのはなぜ? 飽食の町の常識に納得した夜

食文化

人口に対する飲食店の数がとても多い北海道の上川町。公衆衛生関連の取材を終えたら、夕方遅くになっていました。本来なら近隣の宿に入りたいところですが、町中にビジネス需要のホテルはほとんどなく、かといってひとりで層雲峡温泉に泊まるのも空しい。

層雲峡温泉

なので旭川市内のビジネスホテルを事前に手配していたのですが、せっかく来たのだからと、取材相手の方々が、宴席を用意してくれました。僕はレンタカーで移動しているので、呑むわけにいかないけれど、参加しないという選択肢はなく、町内のお店に誘導されたのでありました。

会場は、僕が昼に食事をした駅近くのラーメン店。別記事で書いたように、この町ではラーメン店で宴会をするのが当たり前なわけです。それをしっかり確認させていただきました。

ラーメン日本一を名乗る町は飽食の町でもあった。その理由は?
北海道の上川町を知っていますか? ここは約3200人と人口が少ない(北海道の市町村で127位)ものの、面積は約1050平方kmと広く(同、12位)、人気観光地の層雲峡温泉があります。北海道第2の都市、旭川市に隣接していることから道外からのア...

■豪華な食材がたっぷり並ぶ

店の奥の個室風の空間に入ります。そこにはすでに取材対応してくださった町の公衆衛生に関わる方々が5人。全員女性です。僕のようなおっさんばかりなら、気楽に座るものの、女性だらけの席に座るのはなかなか緊張しました。

テーブルの上にはすでにいくつかの料理が並んでいました。それは別記事で豊富な食材が揃う町と紹介したように、バラエティに富んだものがズラリ。ローストビーフ、サラダ、カニやいくらの寿司、お造り、中華、天ぷら……。

食べ始めると、次々に新たなものが運ばれてきます。美味しいので酒なしでも食べることができますが、女性たちはおしゃべり中心であまり食べません。2時間ほど経過し、そろそろお開きかなと思った時点でも、半分以上の料理が残っていました。

これはもったいないなー…。

そもそも、なぜこの女性中心のメンバーでこんなに大量の料理を注文したのでしょう。女性たちの話によると、この店はよく利用しているというから、注文間違いでもなさそう。もしかして、遠いところから来た僕をもてなすために大量にしたのだろうかと、いろいろ考えつつ、残った食材が破棄されることが気がかりでした。

■ちゃんと計算されていた
それが杞憂だと知ったのは、会計をお願いした時でした。

店のスタッフが請求金額を書いた紙とともに、大量の持ち帰り用のパックを持ってきたのです。女性たちはそれを当たり前のように受け取り、余った食材を一斉に、次から次へとパックに詰め始めたのです。

一斉にパック詰めが始まった

いきなり始まったイベントに目がテンな僕。

「あのー、宴会ではいつも持ち帰るのですか?」

恐る恐る聞いた僕を、女性たちは「え、そんなこと聞くの?」という目で見ます。あれ、あれれ?

その後、よーく話を聞くと、このあたりの宴会は、食べきれないほどの料理を注文し、余ったら持ち帰るのがごく普通のことでした。もちろん他の地域でも珍しいことではないけれど、「持ち帰ること前提」になっている地域は珍しいと思うのです。なんて感想を話したら、

「え、普通でしょ?」

と返ってきたのが、上川町らしさなのかもしれません。

そういえば、料理をパックに詰めているときの女性たちの会話は面白かったですよ。

「これで明日のお弁当助かったわ」
「あ、これウチの子供が好きなんで多めにちょうだい」
「旦那がこれ嫌いっていうのよね、私は好きなのに」
「それ、気を付けて詰めないと崩れやすいよ」

持ち帰りの達人ならではの会話が繰り広げられていたのでした。

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