北海道の上川町を知っていますか?
ここは約3200人と人口が少ない(北海道の市町村で127位)ものの、面積は約1050平方kmと広く(同、12位)、人気観光地の層雲峡温泉があります。北海道第2の都市、旭川市に隣接していることから道外からのアクセスが良く、多くの観光客が訪れる町でもあるのです。*データは2022年1月現在
■ラーメン日本一の町
そんな上川町ので注目すべき点は、人口に対する飲食店数の多さです。中でもラーメン店比率が高く、北海道内で名を馳せる店が複数あり、「ラーメン日本一」を掲げているほど。
実際、町民のラーメン好きはかなりのものです。男性なら月に6~7回、女性でも2~3回はラーメンを食し、70%以上がスープを半分以上飲むという話を町の保健担当者から聞きました。
また、ある既婚女性からは「主人は家で食事を作っていても、ラーメンは別腹だと食べるのです」との話があり、この町の人にとってラーメン店に行くのは喫茶店に行くのと同じような感覚だというのです。、
「なるほど、旦那さんのラーメン好きは困ったものですね。コレステロール値など、健康が気になりますね」
と反応した僕ですが、次にその女性から返ってきた言葉にはシビれました。
「ホントに。私も胆石ができるまでは、昼にいつもラーメン食べていたので心配なのです」
あんたもかい! 思わず突っ込み入れたくなりました(笑)
「町民が外食する機会は多いと思います。何か行事があれば外食となり、親戚が家に来ると、ラーメン屋に連れて行くのが定番です」
と、町の保健担当者。選挙の帰り、町の寄り合い、老人クラブの会合の後、飲みに行っても最後はラーメン屋。なんて流れが普通といいます。
でも、いつもラーメン屋ばかりじゃ飽きませんか? と思ったら、実はほとんどの店に宴会場があり、町民の集まる場所として、ラーメン以外のメニューも豊富なのだそうです。とくに夜は宴会用に、居酒屋メニューがしっかり用意されています。要するに、どの飲食店に行っても宴会ができるというわけです。
■なぜ飲食店が多いのか
では、なぜ上川町にこんな飲食店が多いのでしょう。調べていくと、1954(昭和29)年の洞爺丸台風が影響していました。一般的には青函連絡船の洞爺丸の事故がクローズアップされがちですが、この時、上川町の山林では多くの倒木被害が出たのです。
その処理をするため全国から多くの若い男性が人が町に入ったことで、町に歓楽街が自然発生。それが現在の飲食店の多さにつながったこと。大きな温泉街があるため、そこで働く人々の外食比率が高いこと。そして、温泉街や歓楽街での料理用に、紋別や網走などからの海産物が大量に入ってくるため、海から遠い町なのに、食材が豊富にそろったことなどがあげられます。
札幌から上川町に嫁いた女性の、こんな話も興味深いものでした。
「初めて来た時、ここはとても食べ物の豊富な町だなと思いました。宴会の席でも山の中なのに、新鮮なお刺し身がたくさん並びます。しかも安くておいしい。札幌より食が充実しているって思ったくらいです」
■コレステロール値が…
このような食文化ですから、上川町の健康課題にはLDLコレステロール値の高さが指摘されていました。僕の手元には2004年の北海道市町村別総コレステロール値データしかありませんが、上川町はワースト3に入っていました。
ちなみに、ワーストの上位に入っている市町村は江差、知内、乙部、紋別など、海に面していることが共通点であり、ワースト10に入っている中で海に面していないのは上川町と比布町、倶知安町だけ。
比布は上川のお隣。倶知安はニセコなどリゾート色が強いところなので、ワーストに入る理由は豊富な食材と、外食が充実しているという点があげられると思います。
■糖質の高い食が溢れている
ラーメンと海産物以外の食にも注目すると、別海の記事でご紹介したのと同様、糖質の摂取量もかなり多いようです。
代表的なものではトウモロコシ。食事の際のおかずとしてではなく、別腹のおやつとして食べることが多いのです。作り方も大鍋で丸ごと大量に茹で、ひとり1本どころか、2本、3本と食べることも。
カボチャも同様に、産地なので大きくゴロンとした切り方をしたうえ、煮付けるのに砂糖も使う。トウモロコシもカボチャも北海道のものは糖度が高いので、健康への影響が出てしまうわけです。
ほか、ジャガイモを茹で、潰して、澱粉や小麦粉、砂糖を入れて揚げるorバター焼きする北海道定番の食、「いも餅」もよく食べます。
もし貴方が上川町に行く機会があれば、ぜひともそんな食文化を確かめてみてください。