地元のお母さんたちが作った郷土料理に圧倒されたお話

食文化

徳島県海陽町で地域の健康問題を取材をしたときのこと。つまりは「糖尿病」ですね。徳島県は1993年から2006年までの糖尿病死亡率が全国ワースト1でしたし、今も死亡率の高さは続いています。その原因が何なのか。絶対的にコレだという犯人は絞り切れないのですが、食文化が大きな影響になっていることは想像がつきます。

この時の取材の中でも、地元の保健関係者の方々とかなり議論し、徳島ならではの糖質文化があることに話題が集まりました。たとえば、

・法事の席にお菓子たっぷり
・病気のお見舞いなどもお金+お菓子
・せんべいは菓子でなく、菓子といえばあんこがいっぱい入ったおまんじゅう
・お客さんが来れば菓子鉢にどっさり菓子を盛る
・スーパーの安売りの目玉は砂糖

おもてなしは甘いもの。甘い=美味しいという文化があり、なかでも驚異的だったのはみかんどころの家庭でよく作られるという“みかんジュース”のレシピでした。

産地で余ったみかんを自宅でジュースにするのですが、糖度10~12%のみかん果汁6升に対し、砂糖を6kg入れている例が報告されていました。その甘さは相当なものであると…。

■郷土料理に圧倒される
朝から食文化の話で盛り上がり、やがてお昼になると、

「今日のお昼は、健康と食文化の関係を把握するため、昔から伝わる郷土料理を用意したので一緒に食べましょう♪」

とのお誘いを受けました。百聞は一見に如かず、こういうお気遣いはとても嬉しいじゃないですか。

「こちらへどうぞ」

役場の会議室のような部屋に招き入れられると、中には6名の割烹着姿のお母さんたちが待っていました。あらら? それだけでもちょっと面食らったのに、大きなテーブルの上には料理が並んでいるではありませんか。

「え、これ、全部わざわざ作ってくれたのですか?」

恐縮しながら改めて料理を見ると、どれも美しく盛られ、とても手間暇かけて作ってくれたことが伝わってきます。すごいです。

それにしても、テーブルに並ぶ料理の量はかなり多く、こんなに作ってどうするのと思いました。すると、他所から海陽町に嫁いできた案内役の保健関係者曰く、

「私の嫁ぎ先では、人様に料理を出す時はテーブルが見えたらいけないって言われてました。隙間なく料理で埋め尽くすのが礼儀なんです」

お客さんのために食べきれないほど用意するのが、徳島の「おもてなし文化=お接待」なのですね。

■寿司を好むけれど、その配合が・・・

さて、今回振舞われた料理は寿司が目立ちました。いわゆる田舎寿司的なものですが、実は徳島県人が作る寿司は、酢飯がかなり甘いとの話がありました。これは他県の人に指摘されるまで気づかなかったことといいます。

町の保健関係者たちは

「自分たちは本当にそんなに甘いもの好きなのかしら?」

確認するため、住民に自宅で作る寿司酢の割合を表にしてもらったところ、ほとんどの家庭で栄養学的に推奨される標準的砂糖量を超えていました。それも並みの超え方ではない。少なくても1.5倍、多い人だと8倍近い量が使われていたというから驚きです。

ちなみに、赤飯は塩でなく砂糖をかけるため、当たり前の基準は地域や人によって本当に違うものだと改めて思った次第です。

■圧巻の寿司たち
では、あらためてテーブルの上を見てみましょう。まずは寿司ですが、

・ちらし寿司

・押し抜き

・タチウオの押し寿司

・姿寿司

いずれもあまり糖分を感じなかったものの、週に2回は寿司を作るという地元の方の話は興味深いものでした。それだけで米の摂取量はかなり多いですからね。また、柑橘が入っていると、砂糖が多くてもあまり気づかないという面もあるように思いました。

■甘ーいおもてなし文化の真髄■
お菓子も注目に値します。

・かんば(さつま芋と小豆のあんこ)

・出世芋(つぶして丸めた里芋の周りを小豆のあんこで包んだもの)

とても美味しく食べたものの、砂糖をかなり使っている様子。しかし、手作りだから嫌な甘さが少なく、いくらでも食べられる。女性なら別腹といいわけしながらどんどん食べていくのもお約束のようです。

そしてそして、極め付きだったのは、以前ご紹介した「ういろ」が食後のデザートに出てきたこと。ものすごいもっちり感&ねっとりとした甘さにノックダウンしそうでした。

もっちりとした弾力と、濃厚で嫌味のない甘さが後をひく、阿波のういろ
初めて食べたのは、徳島県海陽町に取材に行った時。地元の保健師さんにこの地ならではの食べ物を教えてもらっている時でした。 スーパーで売っているのを買ってみたら、思った以上にズシリと重く、その濃厚な味わいは何となく想像がつきました。 で、これを...

もちろん、ありがたくいただきました。ただね、何かをひとつ皿に取るたびに、お母さんたちの視線が僕に集まり、それは〇〇というもので…。と料理の歴史から作り方、地元での食べ方まで丁寧に説明してくれます。

これって結構緊張するのです。宴席だったら、お酒の勢いで盛り上がるなんてこともできるけれど、お茶を飲みつつ、皆さんの話を聞き、写真も撮って、ICレコーダで録音しながらメモも残すので尚更でした。

でも、滅多にできない貴重な体験ですし、地元の方々の生の声を聴けたことは素晴らしい体験であったと思うわけです。皆さんも旅行先などで、有名店の〇〇だけでなく、地元に伝わる素朴な味に触れてみませんか?

(おまけ)

他にもこんな料理がありました。

・カツオのたたき

・あら煮

・ひじき煮

ごちそうさまでした。

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