石川県能登半島の付け根には日本でも珍しい「なぎさドライブウェイ」があります。日本海側の宝達志水(ほうだつしみず)町と羽咋(はくい)市にまたがる全長8㎞の千里浜(ちりはま)海岸を、波打ち際ギリギリまで寄ってドライブすることができるのです。能登ドライブ旅行の大きな目玉です。
なので、多くの観光客がここを気持ちよく疾走すると、満足したとばかりに奥能登や金沢方面に去ってしまうのですが、もうちょっと深掘りすると、意外な面が見えてきます。
そのひとつが、石川県は昔から繊維王国で知られ、この地方も、とくに昭和40年頃は大変潤っていたという話でした。
どのくらい儲かっていたのか、興味本位で地元の方に当時の話を聞かせてもらうと、その頃に「ガチャマン」という言葉が生まれたとか。
え、科学忍者隊のことですか? (ふ、古い)
まさかね。わかりますか、この言葉の意味?
機織りをする時、「1回の動作=ガチャンと織機を動かすと1万円儲かる」という意味から、「ガチャンで1万円」。それが「ガチャマン」になったというのです。
それほど儲かるのだから、手を止めるのはもったいないですよね。食事している時間だって惜しい。
というわけで、食事休憩など取らず、片手でつかんで頬張れるものを口に放り込んでは、残りの手で機織りをすることが流行ったそうです。するとさらに儲かる。
儲かるから、最初はおにぎりを食べていたのが高級な寿司になり、それに慣れてしまう。なので、この地方の方々ってかなりお寿司好き。毎年消費量や外食に使ったお金などで都道府県別のランキングが発表されると、石川県って必ず上位に入っているくらいです。
お昼にお寿司を食べることもよくあるようで、僕も地元の方からランチに誘われ、連れていかれたのは地元の寿司屋さんでした。
出てきたのは大きな切り身がどーんと乗った、結構ボリュームのある贅沢なセット。ぉお、これはうまそうだ。カニも贅沢に入っているし(にっこり)。ありがたくいただこうとふと周りを見たら、あることに気づきました。
地元の方々が結構な確率で、寿司をお醤油にどっぷりつけていたからです。思わず、いつもそんなに醤油を? と聞いてしまったくらいです。
「あ、やっぱり多いですか? いやーこれも癖でして」
と笑っていましたが、女性も同じような食べ方をしている人が結構いました。
その会話の中で新たに知ったのは、この地方は醤油のこだわりが強く、ウチは〇〇醤油と決めている家庭が多いそう。種類も多く、料理にドバドバ使うらしく、一升瓶で購入するのが当たり前。
けれど一升瓶を買いに行くのは大変なので、どこかの家が醸造元と契約し、何十本とストックしたものを、ご近所で分配しているそうな。昭和じゃあるまいし、本当ですか? としつこく聞き返したら、その地元の方曰く。
「ウチもご近所の醤油をストックしていますよ。見に来ますか?」
お言葉に甘えご自宅に伺うと、本当にありました。
聞けば、同じようなことをしている地区はほかにもあり、醤油の種類もかなり多い。後日、それらの醤油を集めてもらったところ、結構色が違うのです。味見をすると、関東のいわゆるナショナルブランドより甘めでした。
ちなみに、ドライブしていると沿道にこの地方ならではの弁当店、「すしべん」チェーン(本社:羽咋市)をよく見かけます。その名の通り、普通のお弁当のほか、握り寿司弁当が豊富に揃っているとの情報もありました。
早速、その中の一軒にお願いし、店内を見せてもらうと、確かに握り寿司の率が高かったです。かなり寿司が定着しているのだなと実感した次第です。
そして、もうひとつの食文化として注目したいのは、皆さん、甘いもの好きなのです。石川県全体でもそうですが、アイス(クリーム・キャンディ)の消費量は常に上位にいます。これは女性だけかと思ったら、中年のおじさんたちも、旅行などでSAなどに寄ると、ついアイスを買ってしまうし、呑んだ後のシメにアイスというパターンもあるといいます。
近隣のスーパーの週末の目玉はアイスの特売との声も聞きました。つまり、この地方の食をまとめると、
醤油も砂糖もたっぷり使う。
握り寿司が大好き。
甘いもの、アイス大好き。
ということで、このような観点から飲食店やスーパーマーケット、お弁当店を覗いてみると、旅の楽しさがさらにアップするというお話なのでした。
もちろん、公衆衛生に関わっている方々は、ここからどのような健康問題が想像されるか、調べてみるのもお忘れなく。結構おもしろいデータがたくさん出てきますよ。