大自然に囲まれた、見渡す限りの牧草地。ここで育つ子どもの健康問題

風土風習

北海道の道東に位置する別海町の面積は約1320平方km。全国の市町村ランキングでは9位に入るほど広い。それでいて人口は約1万4500人。ちなみに牛は約12万頭と圧倒的に多く、そのほとんどが酪農(乳用)です。*2022年末の時点

富山県(射水市)出身の立川志の輔師匠が、故郷の話をする時によく口にする「人口の半分がホタルイカ」を真似ると、「人口の9割が牛」になります。なぜ、こんなに牛が多いのか? 

背景にあるのは、別海を含む根釧(こんせん)地方が1955(昭和30)年から始まったパイロットファーム事業により、北海道屈指の大規模酪農王国になったことがあげられます。

ちょっと車で走れば、見渡す限りの牧草地が続くわけで、都会の猫の額ほどの土地でちょこまか動いているのとはスケールが違う。きっとこの地で育った子どもたちは元気いっぱいの健康優良児なのだろうと、訪れる前は勝手に想像していました。

けれど、実際は「子どもの肥満対策が町の重要課題」になっていた。なぜなのか?
理由は次のようなことでした。

■通学は基本的にバス
広大な土地に家が点在しているため、通学は基本的にバス通学。歩いて学校に行くことはほとんどない。町の車輌センターには小中学校送迎用の大型スクールバスがズラリ並んでいる。

市街地に住んでいる子どもも、防犯的な意味合いから親が車で送迎するケースが多く、歩く機会があまりない。冬なんかどう考えても歩けないので、運動不足まっしぐら。

コンクリートジャングルを歩き回りながら、通学で電車、バスを乗り継ぐ都会の子の方が運動しているというわけです。

■ネット環境が整備され家にこもりがち
別海は早くから町にインターネット網を整備していたため、子どもたちは家から出ずともゲームなどで遊べてしまう状態になっている。しかも、2020年からは町内全体の光回線整備が始まっている。

子供もそうなので、大人の肥満ももちろんあります。こちらは食文化の問題も絡んでくるので、また別の機会にこの地方の産業と食文化の関係をご紹介しようと思います。

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