東京湾に面した富津市は海苔漁が盛ん。ブランド名は江戸前ちば海苔

風土風習

千葉県富津市と聞いて思い浮かぶのは何でしょう?

観光的には東京湾に突き出た富津岬や潮干狩り、マザー牧場。

提供 (公社)千葉県観光物産協会

食なら「はかりめ」と呼ばれるアナゴが有名です。このあたりは多くの方が知っていることと思います。では、海苔についてはどうでしょう?

提供 (公社)千葉県観光物産協会

■今や江戸前といえば千葉県産
全国漁業協同組合連合会のHPによると、海苔の生産量は昭和初期まで東京都が1位でした。それが江戸前の海苔と呼ばれていたわけですが、時代の流れで埋め立てにより養殖地が激減。東京都から千葉県へと養殖地が移っていきました。

千葉県の生産地は三番瀬漁場(市川市、船橋市)、盤洲干潟漁場(木更津市)、富津沖漁場(富津市)があり、最も多くの生産量を誇っているのが富津で、千葉県全体の約80%を占めています。

提供 (公社)千葉県観光物産協会

参考までに、日本全体で見ると海苔の生産量は佐賀や兵庫、福岡有明、熊本の順で多く、とくに九州が際立って多いため、全国的に見れば富津の生産量は少ないです。ただ、歴史のある東京湾(江戸前)の海苔で、香りがよく色や味も濃いので「江戸前ちば海苔」の名がつけられています。

提供 (公社)千葉県観光物産協会

■海苔漁師の生活サイクルと健康
ところで、海苔はどうやって収穫するか知っていますか? 実は小舟に屋根のような形をしたパイプが付け、これで網の下をくぐりながら獲るのです。

提供 (公社)千葉県観光物産協会

海苔漁師の収入の9割は冬に集中し、9月からしばらくは休みなし。朝早くから働くので朝食を家で食べず、ハードな仕事なので腹を満たして手っ取り早くカロリーを得るため、船上で缶飲料を水代わりに飲む……。そして、漁をしながら片手で食べられる食事として好まれるのは菓子パン…。

これって、別記事で紹介した別海の漁師と同じパターンですね。

道東の肥満問題は、基幹産業とその歴史が大きな影響を与えていた?
別記事で北海道野付郡別海町の健康問題について触れたところ、思った以上にアクセスが多かったようです。今回はその続編として、別海町の基幹産業と歴史を絡め、さらに詳しくご紹介します。 ■一気に近代化した酪農事業別海は酪農の町として知られています。...

共通しているのは、働くことが第一。体は二の次。理由はそれだけ稼げるから。漁協で話を聞いたのは2007年でしたが、1シーズンで最低でも1500~3000万円ほどは稼ぐといいます。

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一方、経費もそれなりにかかり、200 万円くらいの機械を買うこともよくある話。海水ごと生海苔を投入するだけで、乾燥海苔が10 枚に束ねられて出てくる「自動のり乾燥機」などは2000 万円! 収入はあるけれど、経費もかかるわけです。

だから頑張って働く。すると体が猛烈に疲れるから、甘いものを欲することが癖になってしまう。このような生活は簡単には変えらないけれど、健康あっての仕事なので、所属する漁協と共に、地元の保健師や栄養士が協力しあっている姿が見られました。

そんな背景を知れば、富津の海苔に興味がわいてきませんか? もし行く機会があれば、おいしい海苔を売っている店など、地元の人に尋ねてみてはいかがでしょう? 海苔以外でも、思わぬ掘り出し物に出会うこともありますよ。

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