サンマが伊豆白浜の郷土料理になった理由と、驚きの製法

風土風習

ここ数年、サンマを楽しむことが少なくなりました。昔は秋になると大量に出回り、一匹100円以下で手軽に買えるうえ、とてもおいしくいただける庶民の味方だったのに、悲しい限りです。

ところで、サンマの水揚げで有名な港といえば、北海道。そして東北の太平洋側や銚子などの名がよく上がります。関東以北が多いのは、冷たい水を好む魚だということ。それによって身に脂がのるため、シンプルに塩焼きで食べるのがうまいのは誰もが知るところ。

逆に言えば、脂ののっていないサンマは、あまり好まれない傾向にあるわけです。しかし、静岡県下田市の白浜地区では、それを独特の郷土料理にして食べる習慣があり、知る人ぞ知る名物になっています。その名は「さんま寿司」。ベタな名前ですけど、その製法と味を知ったら、きっと驚くと思います。

さんま寿司の歴史はかなり古く、室町時代にまで遡るといいます。最初は浜に打ち上げられたサンマを白飯の上に乗せたもの。後に白飯が炊き込みご飯に変わり、幕末の頃には「さんまむすび」になりましたが、それが発酵で酸味を帯び、よい風味を持ったことから甘酢を加え、押し寿司風に変化したとか。

詳細は、僕が取材させていただいた、伊豆白浜のみどり荘さんのHPにも紹介されているので、そちらを見ていただいた方がよいでしょう。

作り方のポイントは、丁寧な下ごしらえです。ポイントは、

・たっぷりの塩で〆る 12~24時間
・小骨をとって酢で〆る 8~10時間
・砂糖をまぶして置く 8時間

このような段階を踏み、酢飯の上にサンマを乗せ、包み込むようにしてから押し寿司にする。この時にスライスした生姜を乗せるのもポイントで、甘酢と生姜で、フルーティな味わいになるわけです。他の地方にある青魚の寿司とは、まったく違う、食べやすさが自慢なのでした。

原料となる脂の少ないサンマは、白浜では昔の話にあるように、12~2月くらいに獲れることがあったようです。近年は白浜産が少ないため、他県産の脂の少ないものを仕入れて郷土の味を守っているようです。

なお、さんま寿司を味わえるのは、毎年10月~5月くらいまで。みどり荘さんではネット注文も受け付けていますし、伊豆白浜観光協会事務所でも買うことができます。今年はぜひ、観光を兼ねて伊豆に足を運んでみてはいかがでしょう?

取材協力 伊豆白浜みどり荘
写真は2008年撮影 交通新聞社「旅の手帖」取材時
*価格や販売時期は伊豆白浜観光協会のHPで最新の情報を検索してください

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