年間1万匹以上のハブが捕獲される島の制度と備えとは

風土風習

2010年10月20日、鹿児島県の奄美大島で未だかつてないほどの豪雨災害が起こりました。被害は島全体におよび、各市町村で床上・床下浸水、土砂崩れが発生。とくに被害の大きかった奄美市住用町では、2日前から降り続いた雨が急激に強くなり、住用川が一気に氾濫。近くにあった住用総合支所は、あっという間に水が流れ込み、最高水位は支所前で240センチに到達してしまいました。

豪雨被害後の住用総合支所


近隣の集落はもちろん大打撃。自力で逃げることができた人はいいけれど、特別養護老人ホームでは避難そのものや、避難先の確保に大変な苦労があったといいます。

そんな未曾有の災害に対し、地元の保健師たちは自らことなど二の次に、救援物資を背負い、土砂崩れの現場も徒歩で乗り越え避難所に向かっていきました。

*奄美市より借用


役所の人間なら当たり前とはいえ、実際の現場の話を聞くと、よくそこまでできたものだと思ったものでした。

もうひとつ、恐ろしい思ったのは、奄美にはハブが普通にいて、噛まれると大変なことになるという事実です。奄美豪雨災害では土砂が家の中まで入ってきたことで、後片付け中にハブと遭遇することも珍しくなかったといいます。

奄美大島では普段から、被害を防ぐため生け捕りにしたハブを役所などに持ち込めば1匹3000円ほどで買い取ってくれる制度があります。それで生計を立てている人もいるくらいと聞き、本当にそんなにいるのでしょうかと尋ねたところ、

「では、こちらへ」

連れていかれたのは、保健所脇の小さな建物でした。「ハブ取扱室」なんて看板が掲げられていました。まさか…。

「あ、やっぱり」

たっぷりのハブがうごめていました。


参考までに、このようにして持ち込まれた奄美大島のハブの買取数は、2022年度だけで1万3000匹を超えます。

万が一噛まれた時のために、毒の吸引器も配備されているとはいえ、それはあくまで一時しのぎ。

旅を楽しむのはいいけれど、その地域のことを少しでも知ってから訪れることの大切さを学んだような気がしました。

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