40分かけて焼き上げた皮は極薄皮パリッパリ。歯応えも味のエッセンス

食文化

姫路で行列のできる鯛焼き屋さんがあると聞いていた。

最初は乗り気じゃなかったのです。

実は東京で同じような評判の鯛焼きをいくつか食べたことがあって、その味にまったく納得してなかったから。また同じような店だったらイヤだなー。ちょっと不安に思いつつも姫路駅に降り立った。

昭和のブルースが似合いそうな、細いアーケード商店街を少し歩いたら、すぐ目の前に現れた。

店の外観は控えめ・・・。とは間逆の

「ウチは鯛焼屋だい!」

と主張していた。商店街のY字路の角にどーんとデカイ看板があって、絶対に目立つ。店名は鯛焼本舗 遊示堂。

訪れたのは開店して間もない朝10時。さすがに行列はなかった。ないのだけど、店の中はやけに忙しそうだ。覗いてみれば一心不乱に焼いてます。お客さんはパラパラとしか来ないのに焼いてます。焼いてます。焼いてます・・・。

「こうして焼いておかないとすぐになくなっちゃうんですよ」

スタッフが汗をぬぐいながら教えてくれた。よく見ていると、焼時間が異常に長い。極弱火でじっくり焼いていくから完成までに40分はかかるという。それにしても、まだお客さんはパラパラとしか来てないのに何を焦っている? 

その疑問はしばらく店の前に居たら解決した。

「20個ちょうだーい♪」

「俺は30個ね!」

お客さんが少ない時間でも、買っていく個数が凄かった。みんな箱買いだ。平日の午前中だからまだ対応できるけれど、土日になると、次から次に押し寄せてくるからもう間に合わない。

供給と需要のバランスが時間とともに崩れていく。すると、お客さんの待ち時間が増えてしまう。だから一心不乱に焼く、焼く、焼く・・・。

そもそもなんでこんなに売れているのか? 1個買って食べてみた。

パリッパリパリパリッ! 皮が無茶苦茶薄くて見事なまでな硬質感。それでいて中のつぶ餡がアッツアツで皮のパリパリ感と絶妙のハーモニーを奏でる。

「ほっはっふっふぅーほぉっ・・・」

こりゃ、うみゃい♪ まいった。1個90円という値段設定も泣かせる。平日で1500、土日なら2000個は売り上げるというのも頷ける。姫路の人が羨ましい。

*写真や価格は06年4月当時のもの。 交通新聞社「旅の手帖」取材時

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