京都観光するなら、らしい風景が残る田の字地区をじっくり見ておこう

観光・まちづくり

京都は世界的な観光地だけに訪れる人が多くて、有名どころに行くと平日でも大変な混雑に巻き込まれます。清水寺の参道なんか、あまりの人の多さに圧倒されてしまいます。

コロナ禍が落ち着いてきたとはいえ、観光に便利な洛バスは休止中のようですし、二条城に平安神宮、金閣寺、銀閣寺。足を延ばして嵐山とか、あちこち巡るのは結構下調べと体力がいるものです。

たまには目先を変えて、京都が凝縮された地区を、じっくり歩いて堪能してみるのはいかがでしょう。おススメしたいのは田の字地区です。

■田の字地区を地図で確認
田の字地区とは京都市内の中心部、京都の碁盤の目のような通りの中で「田」文字を形成する、堀川通、御池通、河原町通、烏丸通、四条通、五条通で囲まれた地区のこと。中心は四条通と烏丸通が交わる「四条烏丸交差点」で、地下に京都市営地下鉄烏丸線「四条駅」と阪急京都線「烏丸駅」があります。ここが京都の中の京都と呼ばれるど真ん中にあたります。

出典:国土地理院ウェブサイト *加工して作成
出典:国土地理院ウェブサイト *加工して作成

広い通り沿いは商業ビルが目立つものの、ちょっと路地に入ると昔ながらの町家や文化財が軒を連ね、その合間にマンションが点在。京都の歴史が凝縮したような感じなのです。

当然のことながら地価は高く、京都でも屈指。河原町あたりはデパートなどがあり、ちょっと気取ってお出かけする街。烏丸御池あたりは成功したビジネスマンが住む街なんて評価されています。

■京都の台所
一方、四条烏丸から徒歩5分ほどの錦市場は京都の台所と称される庶民的な商店街があり、独特の風情が感じられます。それもそのはず、市場の歴史は古く、奈良・平安時代から魚や鶏の市が立っていたそうです。

そして江戸時代になると魚市場として栄えました。階段で降りていくタイプの井戸(降り井戸)がいくつもあり、地下空間を天然の冷蔵庫として魚や鶏の保存場所として利用することができたからです。以来、市場として京都の人々に親しまれています。

商店街に足を踏み入れてまず感じるのは、思った以上に暗いことです。道は石畳で幅3.3~5mほど。商店街全体を覆う屋根は「錦」の名の通り赤緑黄に彩られ、両脇に並ぶ店は控えめな照明。時間がゆっくり流れているかのようです。

錦市場を歩いている人は、観光客が半分以上でしょうか。その方たちの目当ては、おばんざいに代表される京都の伝統惣菜や、京漬物、干物、お茶、乾物にお菓子など。一方、昔ながらの鮮魚店や川魚、塩干など、30軒近い魚関連の店は地元相手という感じで、通りを歩く人の流れなどあまり気にせず、黙々と作業をしている姿が目立ちます。これらが混在していることが、錦市場全体の魅力なのかもしれません。

■京都ならではのストーリー
四条烏丸方面から錦市場をどんどん歩いていくと、菅原道真を祀る錦天満宮に突き当ります。ここは四季折々の花々と、境内に湧き出る良質な地下水「錦の水」。「智恵・学問・商才の神様」「招福・厄除け・災難除けの神様」として名を馳せています。

錦天満宮正面に、鳥居の手前を左に向かうと、通りは寺町京極商店街に変わります。ここは平安京の頃に東京極大路と呼ばれ、道幅は32mもあったといいます。それが応仁の乱を期に荒れ果ててしまったため、豊臣秀吉がここに約80の寺院を集め「寺町通り」と名付けた寺院街を作ったのが名前の由来です。

すると、その境内に縁日が立ち、見世物や催し物で賑わい次第に発展。明治時代には寺院の境内を整理し新たな通りを造ることになり、誕生したのが新京極通です。こちらも瞬く間に芝居座や寄席などの興行場や飲食店などが集まり、明治後期には東京の浅草、大阪の千日前と並ぶ日本三大盛り場として知られるようになり、新京極商店街へと発展していったのです。このような、ストーリー性のある商店街をゆっくり散策するのも四条烏丸エリアの楽しみのひとつなのです。

商店街より現代的なスーパーマーケットの方が好きという方は、錦市場より少し北側、東洞院通六角上る三文字町にある八百一本館など覗いてみるはいかがでしょう。広々としていてディスプレイも凝っているし、楽しく踏査できます。

八百一本館

■夕暮れ時からの風景
京都随一の繁華街、四条河原町も田の字地区の中にあります。昼間はデパートなどでショッピング、日が暮れると木屋町や先斗町をぶらりするのもいいでしょう。

先斗町

鴨川や南座、花見小路、八坂神社まで足を延ばすのもおススメです。

花見小路

最後に不動産的なお話をすると、田の字地区内で売買される古い町家は数が少ないうえ、上物がほとんど使い物にならず、京都らしさを保ちながら建て替えると、土地代と同じくらいの出費になるそうです。

写真は全日本不動産協会「月刊不動産」2017年5月号取材時、ほか
協力:住宅新報

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