香川の甘いもの文化の一端を地元スーパーで覗いてみた

食文化

今回はちょっと真面目なお話から……。

香川県と徳島県の健康問題には「糖尿病」という共通のキーワードがあります。死亡率や受療率の高さがそれを証明しているわけですが、最近のデータでは香川県の方が糖尿に対する危機感が増しているように思えます。

香川県の食といえば「讃岐うどん」。原料は小麦・塩・いりこ・醤油なので、糖尿病と結びつかないという人もいるでしょうが、うどんは炭水化物なので糖質に置き換えて考えると、少し合点がいくわけです。疫学的にハッキリしたことは不明ながら、

・野菜摂取量が全国ワーストレベル
・うどんの早食い(平均週に3、4回、副食をつけず一気にすする傾向)
・運動不足(どこに行くにも車)

などの理由を指摘する声は多く、とくに野菜不足を何とかしようと、県は10年ほど前から5品、100g以上の野菜を使った「さぬき野菜うどん」を推奨してきた経緯があります。うどんのお供にご飯(ちらし寿司やいなり寿司)を食べる、いわゆる炭水化物+炭水化物の組み合わせも控えようと呼び掛けていました。

食べ方も問題で、「うどんはすするもの」との言葉があるようで、男性は2玉、3玉を一気にすするのが珍しくなく、噛むという概念もない。それをおやつ代わりにしてしまう。県は「うどん県」を観光の目玉にしているだけに、糖尿病の犯人にしたくないけれど、もうちょっと健康的な食べ方を考えましょうと訴えているわけです。

もうひとつ、糖尿病は生活習慣病なので大人になってから対策したのでは遅いかもしれない。そこで県は2012年から小学校高学年を対象に生活習慣病予防健診も始めたところ、肥満、脂質異常、2型糖尿病になる可能性のある子が約1割も見つかったとの報告がありました。同様の健診を行っている県がほとんどないため比較はできないものの、医療関係者からは「予想以上。将来がとても心配になるレベル」との声もあり、この年代から対策を取る必要性があるとの意識も芽生えたといいます。

■あちこちに甘いものが
もうひとつ、注目したいのは純粋に「甘いもの好き」という点。四国では香川・徳島・高知の3県が寿司大好き県民であり、酢飯に含まれる糖分の多さも気になります。さらに、地元に根付いているみそは甘口の讃岐みそ(白みそ)だったり、醤油豆(香川の郷土料理。煎ったそら豆を醤油と砂糖で煮たもの)もかなり甘い。金時豆が大好きで、甘く煮たものを寿司やパンなど、何でも入れるなどの食文化があります。他にも、

・まんじゅうの消費量が全国上位
・他県の人から酢飯が砂糖でジャリジャリしていると言われた
・お正月にあんこ餅入りの雑煮(甘い白みそ使用)を食べる
・酢のものを食べても酢の味がしない
・和三盆の産地である(徳島も)

などの話をよく聞きました。

■スーパーで目立ったのは、あの食材!

堅苦しいお話はここまで。これまでのお話を念頭におきつつ、地元香川県のスーパーマーケットを覗いてみましょう。協力していただいたのは、高松市に本部があるマルヨシセンターさんです。

今回はとくに糖分に注目してみたところ、目を奪われたのは惣菜売り場でした。中でもとくに気になったのは、甘い金時豆がたっぷり乗ったちらし寿司。四国ではポピュラーな具材とはいえ、酢めしが甘いのにさらに甘い金時豆の組合わせは他県民には衝撃ではなかろうか。

などと思っていたら、お隣のパンコーナーにも金時豆入りを発見。

へぇーと思ったのも束の間、お隣の天ぷらコーナーで見つけたのは、1個421kカロリーの金時豆天ぷら! どこまで金時豆LOVEなのだろうと驚かずにいられませんでした。

■砂糖の特売は喜ばれる
ちなみにお店で特売商品として人気なのは砂糖だとか。ならばと売り場に行ってみると、一般の白糖にザラメ、グラニュ糖ー、三温糖、てんさい糖、きび糖、黒糖。角砂糖にスティックシュガー、カップシュガーなど豊富な品揃え。売り場面積もかなり取ってあり、相当砂糖に対してこだわりのあるお客さんが多いことが理解できたのでありました。

寿司好きな県民らしく、お酢のコーナーも見どころがいっぱいです。醸造酢に米酢、黒酢の他、なます酢、千枚漬けの酢、らっきょう酢、すし酢などの目的別の酢がズラリ。

■あのメーカも認定した甘いもの好き
そんな一画にあって、特筆すべきはあるすし酢がズラリ並んでいたことです。皆さんもよーく知っているであろう、大手メーカー製のすし酢なんですが、他県で見るものとちょっと違うのがわかりますか?

そう、あまくちって書いてあるのです。ウチの近所のスーパーでは見たことなかったので、メーカーに問い合わせたところ

「その商品は中四国限定品です」

との答が返ってきた。いったい何が特別なのだろう? 答は、

「より甘く仕上がっています」

香川県が甘いもの好きとメーカーも認定しているわけですね。

参考までに、これらの写真を撮らせてもらったのは8月初旬。つまりお盆セールの真っ最中だったこともあり、お店の入口付近にはお供え用の特設コーナーもありました。どれも甘いものばかりだったことも付け加えておきます。

はけびきなんて、知ってました?

撮影協力:マルヨシセンター茜町店

画像は2014年のもの。女子栄養大学出版部「栄養と料理」取材時

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